「紀元前4世紀頃から続くワイン造り」
ウクライナワインは、知れば知るほど奥が深いワインです。
風土の魅力を最大限に生かした土着品種ワインや、伝統的な技法と革新的なアプローチを融合させた最新のワインなど、多彩なウクライナワインの魅力は世界中に認知されはじめています。
近年は、国際的なワインコンクールで数多くの栄冠を勝ち取り、その品質の高さと美味しさは国内外で注目されています。
ワインの味わいは、生産地の風土や文化に大きく影響を受けるもの。
ウクライナワインの魅力をたどれば、ウクライナという土地がつむぐ物語を垣間見ることができるでしょう。
この記事では、ウクライナの風土や文化を解説しながら、ウクライナワインの魅力を深堀りします。ワインを通じてウクライナについて学びたい人や、ウクライナワインに詳しくなりたい人はぜひご一読ください。
ウクライナの土地と風土
ワインの香りや味わいは、ブドウ畑を取り巻く自然環境が大きく影響していると言われます。
それは、穀物や水を原料とするビールや清酒に比べて、ワインはブドウの果汁をそのままアルコール発酵させて造るから。
ウクライナの風土を知ることで、そこで育まれたワインの個性をより深く楽しめるでしょう。
■ウクライナの自然環境の特徴
東ヨーロッパに位置するウクライナは、日本の1.6倍もの国土を有しています。
西にはカルパチア山脈、南には黒海があり、ドニプロ川・ドネツ川・ドニエステル川など多くの河川が国土を縦断しています。
黒海北岸にはクリミア半島がつきだしており、クリミア半島南端にはクリミア山脈がそびえています。
東ヨーロッパのなかでは比較的起伏の多い地形で、全土がなだらかな丘陵に覆われています。
ウクライナ全土には「チェルノーゼム」と呼ばれるミネラル豊富で肥沃な黒土が広がっており、古くから「欧州の穀倉地帯」と呼ばれるほど、穀物の栽培が盛んでした。
ウクライナの気候は、大陸性気候でありながら、大西洋から吹く西風の恩恵を受け、温暖で湿潤な海洋性の気候にも恵まれています。
大陸性と海洋性の2つの異なる気候の影響を受ける、気候に恵まれた土地でもあるのです。
■風土が生むワインの味わい
広大な国土のなかに、さまざまな自然環境を有するウクライナ。
ブドウ畑を取り巻く自然環境は産地によって大きく異なります。
そんな環境のなかで地元の生産者たちは伝統と革新を融合させ、ウクライナの風土を最大限に活かしたワインを生み出してきました。
それぞれの産地で育まれたウクライナワインは、香りや味わいも多彩で豊かです。
ポリフェノール含量が多いしっかりとした赤ワイン、花の香りやミネラルを含んだ塩味のある白ワイン、ユニークで爽やかなアロマに膨らみのあるボディを備えたオレンジワインなど、さまざまなワインが醸造されています。
ウクライナワインの産地と特徴
産地の自然環境の違いがもたらすワインの豊かさを楽しめることは、ウクライナワインの魅力のひとつです。土壌や地形、気候などの自然環境に想いを馳せながら、ワインをで味わってはいかがでしょうか。
■主要なワイン産地
ウクライナには、国内各地にワイナリーが点在しています。
ここからは、ウクライナのなかでもワインづくりがとくに盛んな産地を3つ、ご紹介します。
(1)オデーサ州、(2)ザカルパッチャ州、(3)クリミア半島です。
(1)オデーサ州
ウクライナで最高のワイン産地のひとつであるオデーサ州は、ウクライナの南西部の黒海沿岸に位置します。
ドナウ川やドニステル川などの200余の河川が黒海に注いでおり、その大部分には草原が広がっています。
海洋性の気候がもたらす穏やかな気温は、ぶどうの熟成を促進し、コクと深みを与え、ジューシーな重いボディのワインが多く造られています。
また、豊かなフルーツの香りや滑らかな口当たりが特徴です。
また、オデーサ州オデーサは、黒海に面したウクライナ随一の港町であり、屈指のリゾート地となっています。
「黒海の真珠」とも呼ばれ、18世紀頃からロシア皇帝の直轄地としてワイン交易が栄えてきました。ヨーロッパとアジア、中東などの世界各地を結ぶ交通・貿易の国際拠点として発展し、現在ではウクライナの葡萄の約半分がオデーサ州で栽培されています。
日本の神奈川県横浜市とオデーサ市は姉妹都市であり、1965年に協定を締結しました。
(2)ザカルパッチャ州
ザカルパッチャ州は、ウクライナの最も西に位置する州です。
古典的なヨーロッパのブドウ品種や地元特有のブドウ品種をつかったワイン造りがおこなわれ、その歴史は約二千年に達します。
カルパチア山脈がそびえ、標高が高いのも特徴。
山々の清らかな空気や冷涼な気候の影響を受け、クリアで繊細な風味が魅力のワインが生み出されています。
当店が契約しているワイナリー「スタホフスキー」と「チザイ」は、ザカルパッチャ州にあります。
(3)クリミア半島
クリミア半島はウクライナ南部の黒海につきだした半島で、紀元前4世紀頃、ウクライナではじめてワインが造られた土地でもあります。
温暖な大陸性気候と黒海がもたらす海洋性気候の2つの異なる気候と肥沃な黒土、海のミネラル分の影響を受けて造られています。
太陽と降雨量に恵まれたミネラル豊富な土地で生まれるワインは花の香りやミネラルを含んだ塩味があるのが特徴です。
■ウクライナのブドウ品種とスタイル
ウクライナで育てられているワイン用のブドウ品種は多様です。
白ワイン用ブドウ品種としては、キツネのシッポという意味をもつ「テルティ・クルック」や、土着品種である「スホリマンスキー」、ほかにも「ピノ・グリージョ」や「ソーヴィニヨン・ブラン」、「トラミネール」、「リースリング」などが育てられています。
赤ワイン用に育てられているブドウ品種には、「メルロー」、「カベルネ・ソーヴィニヨン」、「ピノ・ノワール」、「サペラヴィ」などが挙げられます。
どのワインナリーも、各々のブドウ畑の風土に合ったブドウ品種を選別し、その土地で造れる最高品質のワインを目指して日々取り組んでいます。
■ウクライナの土着品種
ウクライナワインを楽しむ上で、注目したいワイン品種が「土着品種」です。土着品種とは、限られた地域で古くから栽培されているワイン用のブドウ品種のこと。
ワイン愛好家の間ではワイン界の隠れた名品であり、ワインの多様性が感じられる品種として注目されています。
ウクライナでは、「テルティ・クルック」や「スホリマンスキー」というウクライナ独自の土着品種が育てられています。当店で取り扱っているウクライナワインのなかには、ジョージア原産の土着品種「サぺラヴィ」や、ハンガリーの土着品種「チェルセギフューセレッシュ」などをつかったワインもあります。
土着品種は「その地域で先祖代々つくられている品種」という意味になりますが、多くの場合は、限られた地域で古くから栽培されているワイン用のブドウ品種のことを指します。土着品種は、「地ブドウ品種」とも呼ばれることもあります。
引用:土着品種ワインとは?週末のワインライフを格上げする秘密の品種
ウクライナの産業と文化
■ウクライナの経済と産業
肥沃な黒土に被われた広大な平原では、穀物や作物が栽培されています。
とくに小麦粉の栽培地として有名で、「欧州のパンかご」とも呼ばれます。
ウクライナの国旗は青と黄色の二色ですが、青は空を、黄色は小麦畑を象徴しています。
石油や天然ガスなどの天然資源にも恵まれ、これに基づいて採掘業やエネルギー業、鉄鋼業、造船業、航空宇宙産業なども発達しています。
近年は、IT分野やサービス業も成長。持続可能な経済成長を目指して取り組んでいます。
■ウクライナ文化と伝統
ウクライナ国民の多くは文化・芸術への関心が高いと言われています。
キエフの国立オペラ劇場をはじめ、主要な都市には劇場や交響楽団、音楽・芸術クラブなどが多く運営されています。
また、民族音楽や宗教音楽の伝統も受け継がれ、一般の人達の間でも広く親しまれています。
民族舞踊「ホプァク」や「コサックダンス」、地域ごとに異なる刺繍デザインで彩られた伝統衣装「ヴィシヴァンカ」、独自の神話など、ウクライナならではの伝統が多く引き継がれた国です。
ウクライナの食文化とワイン
ウクライナは食文化も特徴的です。代表的な伝統料理には、ボルシチ(ビーツと野菜のスープ)、ヴァレーニキ(餃子のような料理)、ザクースカ(野菜の煮込み料理)、サーロ(豚の脂身の塩漬け)などが挙げられます。
■伝統料理とのペアリング
ここからは、ウクライナの伝統料理とウクライナワインのペアリングをご紹介します。
・ボルシチと、程よいボディとしなやかなタンニンをもつ赤ワイン
ボルシチは、ビーツなどの野菜をふんだんにつかったウクライナの伝統料理です。ウクライナ料理によく登場する食材のひとつ、サワークリームがよく添えられます。
そんなボルシチに合わせたいのが、程よいボディとしなやかなタンニンをもつ赤ワイン。
サワークリームの酸味と、スープのコクのあるうま味に絶妙に絡み合い、味わいのボリューム感もマッチします。
当店で取り扱っているチザイのメルローや、スタホフスキーのカベルネ・ソーヴィニヨン”ACE”などとも相性抜群。
お互いの味わいをひきたてます。
・サーロと、フレッシュで爽やかな白ワイン
豚の脂身を塩漬けしたウクライナの伝統料理「サーロ」には、チザイのチェルセギや、シャボーのピノ・グリージョなどの、フレッシュで爽やかな白ワインがおすすめです。
ウクライナワインならではの豊かなミネラル感とクリーンな酸が、サーロのうま味や風味と調和します。
ウクライナワインの歴史と進化
ウクライナワイン造りの奥深い歴史と、最新のウクライナワインについてご紹介します。
■ワイン産業の始まり
ウクライナワインには、紀元前4世紀頃からの長い歴史があり、その起源はウクライナ南部の黒海に浮かぶクリミア半島です。
ブドウ圧搾機や、アンフォラとよばれるワイン保存用の陶器などの伝統的な醸造機械も、その時代からあったとも言われます。
その後、ウクライナのワイン文化は、紀元後11世紀頃に、ウクライナ北部へ広がっていきました。
■時代を超える進化
紀元前4世紀から約二千年もの間、大切に育まれてきたウクライナワイン。
その伝統と想いは、今でもウクライナ各地のワイナリーで受け継がれています。
近年、ウクライナのワイン生産者たちは、伝統的な技法と革新的なアプローチを融合させ、一層洗練されたワインを生み出しています。
たとえば、ワイナリー「スタホフスキー」や「ヴィラティンタ」では、伝統あるワインづくりを土台に、イタリア・ドイツ・フランスなどから最新機器を導入し、国際的なワインフォーラムやコンテストで受賞するほどの高品質で洗練されたワインを生産しています。
時代を超えて進化をつづけるウクライナワインの魅力に、世界中が注目しています。
ウクライナワインと現代社会
海洋性と大陸性の2つの異なる気候、チェルノーゼムという肥沃な土壌、黒海という海のミネラル分など、めぐまれた大地で造られたウクライナワインが国内外でどのような評価を受けているのでしょうか。
■市場の動向と展望
近年、ウクライナワインは世界中で注目されています。二千年もの歴史あるウクライナワインはその伝統あるワイン造りを土台に、最新技術を取り入れ、品質の面で大きな進歩を遂げています。国際的なワインコンクールでの受賞も増加し、最近ではベイクシュのシャルドネが世界最大級のワインコンテスト「デキャンタワールドワインアワード2022」にて金賞を受賞しました。
ウクライナワインについてあまり認知されてこなかった日本国内でも、近年、その人気は広がっています。伝統ある国内ワインコンテスト、第26回ジャパンワインチャレンジ2023では、チザイのチェルセギがブロンズ賞、チザイのトロヤンダカルパットがプラチナ賞にそれぞれ輝きました。豊かな花のような香りや程よいミネラル感が特徴のウクライナワインは、日本の和食とも相性がよく、手に取る人も増えたようです。
進化を続けるウクライナワイン。日本国内はもちろん、世界中で今後さらに人気が高まっていくことが期待されます。
当店では、スタッフが直接現地でワイナリーと交渉を行い、選りすぐったワインだけをご提供しています。フランスやニューワールドワインとはまた違う、調和のとれたブーケと味わいをお楽しみください。